青 果 物 の 流 通 技 術 に 関 す る 研 究
− 調 査 : ニ ラ の 予 冷 施 設 及 び 温 度 条 件 ( 第 2 報 )
-朝 来 壮 一
食 品 産 業 担 当F r es hnes s
Di s t r i but i on
Engi neer i ng
f or
F r ui t s
and
Veget abl e
- Pr e-c ool ing Fac ili tie s a nd Pre par ati on C ondi tio ns of Chin ese Ch ive s ( 2nd Rp t)–
Shoi c hi
ASAKI
F ood I ndus t r y Gr oup要
旨
8 月 な ど 高 温 期 は 年 間 を 通 じ , 最 も 青 果 物 の 鮮 度 低 下 が 著 し い が , 鮮 度 低 下 に は 高 温 が 最 も 大 き な 要 因 と な
る . そ の た め 高 温 期 の ニ ラ 選 果 場 の 温 湿 度 条 件 及 び 作 業 環 境 の 調 査 を 行 っ た . そ の 結 果 , 低 温 化 を 妨 げ る 複 数
の 要 因 が 見 出 さ れ た . 選 果 調 製 場 の 設 備 を 目 標 低 温 を 可 能 と す る 断 熱 性 と 設 備 の 高 度 化 を 進 め る と 同 時 に , 調
製 か ら 出 荷 に 至 る 作 業 シ ス テ ム 自 体 を 低 温 化 の 視 点 か ら 短 縮 か つ 効 率 化 し , 温 度 の 途 切 れ を 最 小 に す る こ と が
必 要 と 考 え ら れ た .
1.
はじめに
青果物の鮮度保持輸送を確実に行うためには,コール
ドチェーンの考え方が重要であり,低温と対象青果物に
適した鮮度保持包装を的確に組み合わせ,その収穫から
調製・包装・出荷・輸送工程に不連続な途切れを生じさ
せないことと青果物の食品としての適切な取扱いが重要
である.特にニラのような青果物では,収穫時に根を切
り離されてカット野菜と同じ条件にある食品である.そ
の意味で,温度だけでなく衛生的な取扱いがその後の黄
化や腐敗の防止につながると考える.
本調査は,前報に続いて温度の影響を受けて劣化しや
すい夏場の高温期の輸送テストに際して,ニラを調製す
る選果場と調製施設の温度環境を調査したものである.
2.
調査方法
2. 1 調査対象と方法
○ 出荷調製場:大分市川添JAおおいた戸次選果場
○ 出荷先:
ア)大果北部(大阪青果北部支社:大阪府茨木市宮島
1 丁目 1- 1 大阪府中央卸売市場内)
イ)京果(京都青果株式会社:京都市下京区朱雀正会
町 1 の 1 京都市中央卸売市場内)
○ 対象青果物:ニラ(タフボーイ)
温 度 環 境 は 手持 ち の 放 射温 度 計 及び デ ジ タ ル式 温 湿
度計による実測調査とし,作業内容については,作業者
に対する聞き取り及び立会調査によった.
3.
調査結果及び考察
3. 1 調製環境
ニラは生産者が気温に低い早朝に収穫すると直ちにコ
ンテナに入れられて一時的に冷蔵保管されて午前中に調
製施設( 写真. 1) に持ち込まれ,葉や傷んだ葉を取り除か
れて結束などの調製を行う.その間温度が上昇しないよ
うに空調下で作業することが通常に行われている.この
調製施設のエアコン設定は 23℃となっていたが,実測温
度は+2℃の 25℃であった(写真. 2).
写真. 2 の温度設定は温度センサーが感知してセンサ
ー付近に対して制御する温度であって,必ずしもバラつ
きがある実際の室内の温度ではない.作業場では設定温
度=実測室温と理解していることが多いが,青果物にと
っての温度とは直接の環境温度であり,実測品温である.
写真. 1 ニラの調製作業(大分市松岡)
写真. 2 23℃設定のニラ調製施設の空調(大分市松岡)
温度を問題にする場合,どの部分の温度を示すかとい
うことが重要であり,こうした理解にも修正が必要と考
えられる.選果場では,写真. 3 の大分市戸次の施設のよ
うに簡易ながら施設内をビニール等で被覆遮断してエア
コンで内部温度を制御するところが増えてきた.これも
温度を重視する現れであり,コールドチェーンにとって
重要なことである.
写真. 3 ニラの選果場ライン(大分市中判田)
テスト輸送で前日に生産者予冷処理して戸次選果場
に持ち込まれたニラは,品温15〜20℃の範囲内にあった が,予冷処理しないものは22〜24℃の温度範囲にあった.
生産者は出荷してしまえば,末端の消費地での品質・
効果を間近で観察する機会が少ないため,生産者予冷は
効果が目に見えにくく,その重要性が理解されにくい.
しかし,青果物の鮮度保持上,収穫後(根を切り離して
カット野菜状態にする)は直ちに低温下に移して呼吸を
抑制することが,その後時間を置いて低温に置くよりも
はるかに呼吸抑制の効果と効率が高いことが知られてい
る.例えば,「スーパーマーケットの冷凍食品売り場で
アイスクリームを購入して,それを溶かさないようにで
きるだけ早く自分の家に持って帰り,冷凍庫に収める」
という条件と同じである.一度溶かしたアイスクリーム
を再凍結しても,もはやそれは元のアイスクリームとは
ならない.青果物を流通末端の消費者の食卓にまで鮮度
を維持させるためには,こうした意識が必要不可欠であ
る.
戸次の選果場の作業台上は実測値で 27. 2℃であった.
ニラの予冷後持ち込み温度が17〜20℃であることを考 慮すれば,選果場ラインでは,少なくとも 22℃以下は必
要である.これは作業者にとっては寒いと感じる温度で
あるが,鮮度保持上は必要な温度である.選果場の断熱
処理は写真. 4 のように遮熱カーテンによる温度遮断が
主な方法だが,これは二重遮断あるいはアルミ蒸着型の
塩ビ複合シートなどを利用すべきである.
写真. 4 調製室の遮熱カーテン
さらに調製室の窓は,熱反射フィルムやアルミシート
を貼って太陽光による熱遮断して空調効率をあげるべき
である.作業者の出入りによっても温度上昇が起こるが,
食品工場や卸売市場の低温倉庫ではその開閉についての
注意が徹底しているのが通例である.これらを処置した
上で,エアコンの能力に応じた低温化を徹底的に進めれ
ば,単位時間当たりのエネルギーコストはむしろ下がる.
戸次選果場から持込先出荷施設である J A おおいた冷
蔵所までは,輸送距離 11kmで約 25 分である.この出荷
予冷施設に各 1 次調製施設から持ち込まれるニラの搬入
時温度を調査した結果を Tabl e 1 に示した.
選果場では調製を終えて段ボール容器に収めたニラ
は施設内の冷蔵庫に一時保管され,その日の内に出荷冷
蔵施設に運ばれる.調査時は比較的外気温の高い 8 月の
高温期ではあるが,戸次からの持ち込み温度が 29℃と極
選 果 場 名 輸 送 距 離 Km 持 込 温 度 ℃ 冷 蔵 処 理
滝 尾 3 22. 0 ○
戸 次 11 29. 0 ○
川 添 15 24. 0 ○
日 出 43 29. 9 ○
Tabl e 1 各 選 果 場 か ら の 持 込 温 度
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めて高い.ニラの適温をはるかに越えた異常な温度であ
り,その後に低温処理をしても流通末端で劣化が早まっ
ても仕方のない温度と考えられる.輸送距離や調製施設
での冷蔵処理の有無に関わらず持込温度に差があるが,
距離が近い場合は冷蔵処理後,保冷対策を施していない
場合が多いと考えられる.しかし,輸送距離が長さにか
かわらず,保冷車の利用を含め温度上昇に対して対策を
立てて置く必要がある.輸送温度,持込前冷蔵と調製施
設内での低温処理が非常に重要で,作業効率を上げ,で
きるだけ早く低温で安定した環境に置くことが鮮度保持
上重要と考えられた.
5 .0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
4 : 00 P M ℃
VC終点
目 標
Fi g. 1 高温持ち込みと真空予冷
Fi g. 1 は 29. 9℃で J A 出荷施設に持ち込まれ,直ちに真
空予冷処理( VC) したニラの品温変化を示したものである.
ニラの品温を赤線,目標冷却を青線で示した.持ち込み
温度を 20℃以下で想定したプログラムであるため,一定
の処理時間で終了する.その場合,持ち込み温度が 30℃
近いと,Fi g. 1 の装置が自動停止する VC 終点では,目標
の 10℃以下に至らず 17℃程度で終了する.その後冷蔵保
管庫で翌日まで冷却されるが,一部のニラは真空予冷処
理後直ちに出荷される.この場合は卸売市場まで高い温
度レベルで輸送されることになる.
3. 2 作業動線
品温上昇をできるだけ抑制するためにも,調製作業を
効率化する動線も無視できない.選果場の限られた雇用
人数で,2次調製 〜 結束 〜 包装 〜 検品 〜 箱入れ を効率的 に行うための動線を考慮し効率化するべきである.
戸次選果場では,①包装ライン上で大束のニラを動か
すなどの作業,②傷みなど不良部分の除去を行う修正ト
リミングの過程で切片や除去物などの異物がラインに混
入する事例認められた.
また,ラインスピードが 72 袋/ 分と早いため,包装ラ
イン上で異物除去や検品を行いながら箱詰めするには速
度的に無理がある.40袋/ 分程度の処理速度を含め,作
業動線を見直す必要がある.包装ラインの出口では箱詰
めを行うが,この時点でパック済みのニラの最終検品後
に箱詰めを行うべきである.現状では検品システムが機
能しておらず,大量ロットで出荷する生産者において,
逆に目が行き届かないという傾向にある.
3. 3 段ボールの形状と先折れ
箱詰めは縦型のダンボール( 写真. 5) を用いるが,次の
点で問題がある.通常JAは卸売市場まで持込めばそれ
で終わりと考えるが,その先の仲卸まで段ボールの荷姿
で流れる.その仲卸の取り扱いは横置きで内容物を小売
商に対して展示販売するのが通例である.その場合立て
置きの上部開封では,ニラなど全体を引き出さなければ
内容を確認することができないなどの欠点がある.
写真. 5 輸送用段ボール容器
これらは,卸売市場から先の仲卸の段階で重要で仲卸
段階でのハンドリングを意識したパッケージデザインが
必要である.立て置き・縦型の箱デザインでは,ニラの長
さが箱の長さを上回った場合,左右上方からニラの先端
を折り込まなければならない.この場合にニラの「折れ」
が生じやすい.これに対して横型観音開きの段ボール( 写
真. 6) であれば,たとえニラの長さが箱長を上回っても,
順番に寝かせながら最後まで抵抗なく箱に収めることが
できるので極めて「折れ」少なくて済む.通常呼吸の増
加と同時に細胞が壊れた部分からニラの黄化や腐敗が進
行するため,衛生面からも「折れ」は避けるべきである.
このように「横置き観音開き方式」はメリットが多い.
観音開きは開閉のみの選択の問題であって,デザインを
立て置き型にすれば輸送時の積み上げなどでも問題はな
い.コスト的にも観音開きは通常のダンボールデザイン
であり,自動製函機を使えるため,現状と比較してメリ
ットはあってもデメリットは少ない.
写真. 6 横型観音開きの容器(東京大田市場)
塗装ダンボールは,現在の流通の主流は簡素なデザイ
ン,環境に配慮したイメージ重視の傾向から無塗装,簡
略化の傾向が強い.塗装ダンボールを根拠のない理由か
ら選択するのはコストアップの原因となる.青果用ダン
ボールには「手掛け」が設けられていることが多い(写
真. 7).
写真. 7 手掛けのある段ボール
写真. 8 手掛けのない段ボール
これは卸売市場などでのハンドリングを考慮して設
けられている小さな開口部であり,出荷団体によって大
小様々である.しかし,これは内部の青果物を直接外気
に露出させることになりかねず,段ボールの断熱性をも
損なっている.実際の容器重量は 5kg 程度であり,実用
上は穴がないことが障害になるとは考えにくい.鮮度保
持上は,段ボールの断熱機能等を考慮すれば,写真. 8 の
ように手掛け穴が設けられていない方が望ましい.
実際には鮮度保持で最も進んだ品目であるリンゴな
どでは,無孔ダンボールが通例である.これは内部の温
度変化を抑制することもさることながら,高炭酸ガス+
低酸素での内部ガスの安定化の効果が期待できる.いわ
ゆる高気密ダンボールである.手掛けを必要とするなら
ば,ミシン目処理をしておき必要に応じて,卸売市場段
階で開口すればよいことである.
謝 辞
本 調 査 の 実 施に あ た っ て多 大 な る協 力 を 頂 いた 大 分
県農業協同組合(JAおおいた),大分県農林水産部園
芸振興室及びおおいたブランド推進課,大分県農林水産
研究指導センター農業部に心より御礼申し上げます.
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